IARS2025報告

Early exposure レポート IARS @ホノルル(学会期間:2025/03/20-23)

 私が今回、Early exposureとして参加した学会は、ホノルルで開催されたIARSだ。私にとって、初の海外学会への参加であり、さらに初の海外渡航でもあったため、レジデント同期や森松教授、医員の先生方、他の病院から来られた先生方と一緒に行動できたのは、大変心強かった。

 海外学会のため、当然発表は全て英語で言語のハードルは高かったが、発表内容は日本の学会で同様の発表を目にしたこともあり(気道確保困難が想定される症例にECMOを導入した例など)、海外学会での発表も興味が湧いた。

 以下に、今回の学会で見聞きした中で、印象深かった発表と、私の感想を記す。

➤ Perioperative Allogeneic Red Blood Cell Transfusion and Venous Thromboembolism after Major Surgery (ポスター)

感想:この発表では、RBC輸血がVTEリスクになるという過去の報告はあるが、FFP等の交絡因子を除いて改めて統計解析することで、RBC輸血の有無とVTE発症に差が表れないという異なる結果を示している。FFPやPC輸血を要する場面は、出血等で凝固因子が消費され出血傾向が予測されるときに、出血傾向を是正し相対的に凝固傾向とすることを目的に輸血するだろう。周術期はVTE発症リスクが上がるが、確かにFFPやPC輸血がVTEリスクになる可能性があることは納得できる。一方で、RBC輸血がVTEリスクになりうるという報告があることを今回の発表で知り、輸血を要するような手術では、周術期のVTEについて、より注意をしようと思った。

➤ Facilitating Anesthetic Emergence and Recovery : Update on Mechanisms and Clinical Applications(セッション)

感想:速やかな麻酔からの覚醒を得ることで、患者の状態の評価を迅速に得られたり、PACU滞在時間を短縮できるなどのメリットがある。カフェインが麻酔からの覚醒を早めたとする研究があり、イソフルランで全身麻酔を行った場合にカフェインが覚醒を早めたとする過去の報告があるが、プロポフォールでも同様であったとの報告だった。また、デクスメデトミジンの拮抗薬として、動物ではAtipemazoleが使用されているが、これをカフェインと併用するとより速やかな覚醒が得られるとの動物実験での報告もあった。

全身麻酔後に覚醒に時間を要することがあるが、速やかに覚醒を得られる方法があれば、麻酔時間の短縮やPACU滞在時間を短縮でき、便利だと思った。また、麻酔薬の残存による覚醒の遅延を除外でき、脳神経学的な障害や、低血糖等の問題の発見を遅らせることなく対処できるかもしれない。